都市問題会議(大分)

2013年10月1日

今回の都市問題会議の主題は「都市の健康」である。「都市問題」と「健康」がどう繋がるのかをあえて疑問に持ちながら、またそれを研究しようとの思いで今回の会議に出席をした。

 近年健康ブームと言われ、様々なイベントなどが企画実施されているが、現在参加人数は頭打ちである。運動することは健康にもつながると、多くの市民が理解はしているものの、継続的に運動している人の数は増えず、逆に生活習慣病患者は増えているのが現状である。

 行政がなぜ「健康」について事業として取り組むのか?そこには、今後の市運営の中で重要な点があるからである。人口減少が続き高齢化社会になりつつある状況で今後問題が大きくなるのが社会保障費の増加である。社会保障費の増加を抑える取り組みの一つが「健康」であろう。今までのように、ただ首長の実施する事業という位置付けでなく、市の運営を考え「政策」としての位置付けが必要である。先にも触れたが、様々な「健康」イベントを実施するに当たり重要視している要素は参加人数である。これは決して間違いではないが、重要視していない部分を改めて見直す必要性があると思う。見直すべき部分とは参加していない方々の事である。健康増進政策を行う中で、市民の参加形態を見た場合、ある統計によると35%は自ら運動を実施しており残りの65%が運動を実施していない。運動未実施の内全く、健康も運動も関心無しが18%、残りの47%が、何かしら関心があるものの運動をしていないとの結果が出ている。

このことから考えなければならないことは、行政が事業としてイベントを企画し実施しその参加している方々の多くは、イベントを実施しなくても自ら運動している方で有り、行政が参加人数を捉えている参加者は統計で出ている35%の市民だけをターゲットとしているとも考えられる。今後政策として行う場合は、残りの65%をターゲットにしなくてはならず、もっと細かくするならば、何かしら関心があるとしている47%の方を如何に健康促進の重要性の意識づけ、運動をしてもらうかであろう。また、一つの統計で指摘されていることで、健康に関する事業を実施前と後で市民の健康調査を行ったら、数値は殆ど変っていなかったという統計も出ているそうだ。

 行政が「政策」として行う場合は、いかに参加しない方を参加させることを考えなくては「政策」としての意味がない。なぜこれまでの健康「事業」では効果が限定的であったのか?これを解明しないまま「政策」を打ち出しても効果が出ないのは当たり前である。

 ここで、本市の「健康」特に「生活習慣病」に対する事業だが、予防の観点から18歳から39歳の人を対象にした成人健康診査、18歳以上を対象にした成人健康教室、そして新健康よこすかプランを作成し今年食育を意識した新たなプランを作成中である。実際様々な事業の参加人数を見てみると25年3月末の実績だが成人健康診査は2,188人。成人健康教室は657人である。数字だけを見ると実績は上がっていないと思える。

 改めて言うと行政が健康についての事業を行う大きな理由はこれから増え続けるであろう社会保障費の抑制だ。このことを踏まえ1つの事例が新潟県見附市の取組みだ。【「歩く」を基本とする《健幸》なまちの実現】と題して政策的に取り組んでいる事例である。人口約42,000人、高齢化率がここ10年で5%増え27.3%、25年後には38%になると予想されている市だ。この状況をみれば先に述べたように社会保障費の増大は目に見えている。ここでこの市が取り組んでいる政策は「食生活」「検診」「生きがい」そして「運動」である。「検診」については平成11年から行っている小児生活習慣病予防事業は参考にしたいと思った。新潟大学医学部との連携事業で小学4年生と中学1年生が対象で血圧、血中脂質、肥満度を総合判定しその後保健師と養護教諭が特別授業を実施している。子どものうちから「健康」についての意識付けが徹底されていることは参考になる。「運動」については、平成14年から健康運動教室を実施しており、参加者は目標の7割でかなり高い参加率だ。参加者と不参加者の体力年齢と、医療費を比べた実績を見ると体力年齢は約15歳の若返り、そして何より年間医療費が10万円以上の差が出たことは驚きだ。そして、介護認定率を比べてみると前項平均より2%低く、また同じ地区の新潟県平均と比べると3%も低いことが発表された。この結果を見れば課題となっている社会保障費の抑制に効果が出ていると言える。見附市においても健康運動教室の課題としてあげられているのが

1、興味を示さない住民に対しての効果的な動機付け(動機づけ対策)

2、継続参加者に対する支援策の充実(継続意欲対策)

3、健康は社会的な課題であることの理解(健康意識の変革)

として、課題を見出し対策を行っている。

このような取り組みは今後全国的に広がることになるであろう。そのような中で設立されているのが、SmartWellnessCity首長研究会である。これは平成21年に7県9市から始まり平成25年8月現在で19府県30市町まで広がっている。

 今後本市としても、健康を政策として考え進めていかなければならいと思う。

車社会の地域と交通が発達している地域との違いなど、地域間の違いは多い。様々な先例を踏まえ「健幸」都市を目指していかなければならない。