港区 幼小中一貫教育について

2017年10月2日

港区では、平成26年10月に今後10年間の教育における方向性を示した「港区教育ビジョン」を策定し、その下位計画にあたる「港区学校教育推進計画」を基づいて平成27年4月から教育施策を進めている。その一つに幼少中一貫教育が位置付けられ、幼児期の教育(3年間)から、小中学校の義務教育(9年間)を連続したものと捉え、12年間を見通した指導方針のもとで子どもたちを育てている。
 
港区を視察して最初に感じたのが本市と地域性の違いだ。本市は人口減少に歯止めがかからない状況だが、港区は人口増。平成32年には約125%の人口増加が見込まれており、教育環境においてもその対応が課題なっている。また、これも地域性だが公立小学校から公立中学校への進学率が50%以下である。半分以上の生徒が私立の学校に進学している。

 このように地域性がある中ではあるが、港区で行っている幼少中一貫教育は興味深い施策である。小中の9年間を一貫して教育を実施している自治体は多くあるが、幼少中の12年間を一貫して教育する取り組みは私自身初めて聞いた。

 まず、港区の一貫教育の特徴の一つである「小学校入学前教育カリキュラム」は参考になると感じた。

このカリキュラムは「全ての子供たちの育ちを支え、幼児期の教育の質を高め、伸ばしていく」ことを目的に平成25年度に行政職員と教育委員会、保育園、幼稚園、小学校の各代表者が検討委員会を立ち上げ策定したものだ。カリキュラムは5歳児から小学校入学後1学期までの港区独自のカリキュラムになっており、幼児期から児童期への発達学びの連続性を踏まえて、「生活する力」「発見・考え・表現する力」「かかわる力」の3つの自立の視点から作成し、5歳児から1年生への移行を分かりやすく示しているものだが、それだけでなく、幼稚園、保育園、小学校が連携し移行期の教育を共有しているのが特徴的だ。

これは、幼少一貫教育の取り組みがあってからこそできることだ。この取り組みは、どこにでも起こりえる「小1問題」にも成果を上げている。小学校に入学後、先生の話を聞かない。指示通りに行動しない。授業中に座っていられずに立ち歩く。このような問題を「小1問題」としているが、港区では小1問題を未然に防ぐ為に「小学校入学前教育カリキュラム」をしっかりと活用している。当然のことながらこれは家庭の協力がなくてはできないことなので、幼稚園児が安心して小学校へ入学し学校生活を充実したものに出来るよう、家庭で取り組んでほしい内容をリーフレットにまとめ配布し小1問題の未然防止に連携して取り組んでいる。本市でもこのカリキュラムをぜひ活用したいと考えるが、公立、私立を比べた場合私立幼稚園が圧倒的に多い本市では簡単には行かないが、研究する価値は十分ある。

また、この幼少中一貫教育の目的として、幼児期の教育3年間及び小中の義務教育9年間、計12年間を連続したものと捉え教育の在り方・仕組みを再構築し、保幼・小中の教職員の総力を結集して、子どもたち一人ひとりに応じたきめ細かい指導を充実させ、教育の質的向上と豊かな学びを保障するとしている。このために教職員は教育の質を上げるために教職員同士が校種を超えて互いに良さを学び合う枠組みを整備することで、教職員の保育・授業力や生活指導力を高めている。幼少中一貫教育を推進する過程において取り組みを振り返ったり教員一人ひとりが役割を分担したり、コーディネーターを中心に組織的な協力体制を確立する中で、園や学校の経営参画意識を高めている。これだけでなく、様々な教育課題を解決するため、研究パイロット校(園)、研究奨励校(園)の指定や区内の教員で組織する教育研究会での調査研究、職層に応じた定期的な研修会、連絡会を実施している。さらに、区内の大学などと連携し教育の専門家としての資質と指導力向上も図っている。

これらすべてを参考にし、実施することは非常に困難ではあるが、教育の質の向上は常に考え取り組まなくてはならないことだ。

他にも中学校通学区域を単位とするグループ(アカデミー)ごとに幼少中一貫教育を推進している。

今回視察した内容は地域性があるものの非常に参考にすべき点が多くあった。本市でも施設一体型として設置されているのが、諏訪幼稚園、諏訪小学校、常盤中学校だ。ここを幼少中一貫教育のモデル校として研究していくことも考えて行くべきである。