愛媛県・学力向上推進3か年計画について

2017年10月1日

平成29年度の全国学力・学習状況調査で小中学校全ての教科に於いてA問題(知識)B問題(活用)とも全国平均を上回り、小学6年生は全国6位、中学3年生は全国5位になった愛媛県の学力向上について視察した。

愛媛県では、確かな学力の定着・向上に向けて平成24年度~28年度を「愛媛県学力向上5か年計画(第1期)」とし、その成果や課題、そして学力向上に関する検証委員会の提言を踏まえ平成29年度~31年度までの3か年を「愛媛県学力向上推進3か年計画(第2期)」として策定している。基本方針として、「学びに向かう力、人間性などを養い、知識及び技能(基礎)と思考力、判断力、表現力等(応用)のバランスの取れた育成を重視すること」「学校と家庭、地域が一体となって学力向上に取り組むことができるよう、行政機関や教育機関と連携し支援体制の更なる充実を図ること」としている。そして目標と成果指標は単純明快で、全国上位の学力水準の維持とすべての調査区分で全国平均を上回ることとしている。

学力向上は誰でも望むことだが、昨今では「詰め込み教育になる」、「競争させることの是非」など様々な意見があるが、その中で愛媛県は「確かな学力・豊かな心・健やかな体をバランスよく育み、生きる力を身に付けるとともに、社会生活の中で果たすべき役割や責任を自覚し、変化の激しい世界の中でたくましく挑戦する子どもたちを育てる」には、学力向上が重要としていることに納得である。

愛媛県は確かな学力定着向上の為に平成20年から取り組んでいたが、「すべての教科の基礎となる読解力に課題があること」、「全国と比べると、中学校に比べ小学校に課題があること」、「全国と同様に、活用する力に課題があること」については一部の地域や学校では改善の傾向がみられるものの、依然として地域や学校では差がみられ、県全体としての取り組みになっていない。平成22年の調査では小学校は全国33位、中学校は22位の状況であった。この状況を踏まえ計画策定したのが第1紀の「学力向上5か年計画」である。この取り組みの目標は平成28年度(計画の最終年度)の調査おいて全国トップ10入りとした。結果は小学校、中学校共に全国6位という結果で目標を大きく上回った結果となった。さらに県はそれに続いて29年度から31年度までを第2期として「学力向上3か年計画」を策定し実施している。

これまでの学力向上の取り組みの成果を鑑み「組織力の強化」「授業力の強化」「省察力の強化」を柱として目標達成に向けて取り組んでいる。「組織力の強化」では、全校に学力向上推進主任を配置、主任研修会を年2回実施。県と市町、学校が一体となって取り組むために県の方針を示すとともに情報提供や指導・助言を行っている。

「授業力の強化」では、県独自の学力診断調査の問題作成、基礎力強化シートの作成・提供、読書活動を推進するための読書通帳の作成・配布。

「省察力の強化」では、県学力診断調査の実施及び分析、振り返りテストの実施及び分析、各学校に対し課題に応じた指導・助言を行っている。

 これら3つの柱で需要なのは各学校に学力向上推進主任を配置していることだと感じた。推進主任は学校ごとの現状と課題を抽出し、今求められている学力向上の為の問題は何かと考え、取り組んでいることに成果が上がる秘訣があると思う。授業力の強化では各先生の負担軽減の為に県が授業などでつかえる学習プリント約1,500シート作成し活用している。学力向上に欠かせない読解力を養うための取り組みとして読書通帳の作成も、子どもたちの意識を高める取り組みとして非常に参考になる。以前下関市を視察した際にも同じような読書通帳が導入されていたことを思い出す。また「省察力の強化」で県独自に診断調査を実施していることに驚いた。

 なぜ、あえてやる必要性があるのか?という疑問が涌いたがその答えは単純であった。

 県独自のテストは、結果、評価がすぐわかることだ、という説明であった。確かに結果評価が分かればすぐに対応ができる。授業が分からなければ学力は上がらないのは当然である。県として各市町の取り組みを把握することによってよい例を吸い上げすぐに各学校に発信することができることは重要なことでもある。通り一遍の情報発信ではレベルの差は埋まらない。また、県独自のテストでよい例として県独自の歴史問題を出題することができることだと説明があった。地元の歴史を知ることは非常に重要で、出題することにより学ぶ要素も増え県としては一石二鳥と考えている。

 愛媛県で学校教育に力を入れるもうひと一つの理由として、学習塾に通っている児童の割合が低いことだ。小学校では約28% 中学校では約47%。これを考えれば、学校で学力向上を率先してやらなければならない。

 今回の視察では県の教育委員会を視察したが、本市の教育委員会でできることも多々あると思う。特に学習シートの作成は重要でないか。教職員の多忙が言われている中、学力向上の為に更なる課題を教職員に負担させることについて今後議論していかなければならない。