回遊性と賑わいづくりについて
交流人口を増やす為の方策の一つに「回遊性」がある。いかにその都市・地域に留まってもらうかを考えるのが重要な要素の一つである。今回は、輪島市が行っている「回遊性と賑わいのあるまちづくり」について視察した。
輪島市は、中心市街地活性化のため、中心市街地を回遊したくなるような輪島らしい魅力ある街なみづくりに力をそそいでいる。
輪島市と言えば、朝市が有名である。高山市、勝浦市と並び、日本三大朝市に数えられる朝市で、その歴史は古く平安時代に神社の祭礼日に魚介類、野菜等を物々交換しあっていたのが輪島朝市の起源といわれ、千年以上も続いている。この朝市の利用者は市内外から年間100万人を超える規模である。しかし、ここで問題になったのが、朝市に訪れた方は朝市終了後には帰ってしまう事であった。折角、大勢の方が訪れてくれたにもかかわらず「回遊」せずに帰ってしまうことに問題意識を持っていたそうだ。また、65年間利用されていた「のと鉄道」が廃線となったことをきっかけに、まちづくりが進んだそうだ。
まず取り組んだ事業が「都市ルネッサンス石川都心軸整備事業」である。中心地の元輪島駅から朝市通りまでの約500mの区間を活性化軸と位置付け、輪島らしい街並みの再生と賑わいの創出に68億円をかけて整備する事業だ。
この整備事業で気になったことは、まちづくり協定15項目の中の「1メートルのセットバック」である。協定は遵守という位置付けで、強制はないとしているが全員の地権者が合意するかとの疑問だ。その点を質問すると「まったく問題なく合意」だそうだ。たしかに、1軒でも合意しなければこの整備事業は完成せず、街並みは崩れてしまう。このことをすべての地権者が理解した結果だと推察する。実際この整備した街路を通ったが、きれいに調和がとれ輪島らしい街並み・景観が保たれている印象を持った。また、住民自身も住みやすくなったとの意見が殆どだそうだ。
金沢市の取組みでも感じたが、観光客(交流人口)を増やす事を最初に考えるのではなく、まず、住民の住みやすさを考えるべきとあらためて思った。もともとある地域らしさ、街並み、文化、景観をくずしてまで便利さや綺麗さを求める事は間違いではないか。「どぶ板通り」の事例でも述べたが、その地域らしさを考えて進めなければならない。また、交流人口を増やす施策として「コンベンション等誘致支援助成金」がある。これは、スポーツ大会、大学の合宿、スポーツ少年団の合宿そして宿泊を伴う学会などを誘致するために、宿泊者に対して1人当たり1平均1,000円の助成を行っている。実際、宿泊したホテルには高校生のサッカー部が合宿していた。スポーツ大会の誘致、学会の誘致は本市としても取り組んでも良いと思ったが、合宿に関しては難しいと思った。
野球場、サッカー場はあるが市民が使用する頻度が高く、合宿などで占有させることが可能か、という問題と宿泊施設の問題からだ。本市は宿泊施設が少ないという問題が現実的にある。当然のことだが日帰りより宿泊客の方が経済効果は断然に違う。行政としても客室を増やす為の助成は行っているが増えていない。民間事業者から見るとやはり、横須賀は首都圏からの日帰り地なのかと思わざるを得ない。それならば、やはり回遊性をしっかりと考え、少しでも市内に留まってもらうことを考えなければならい。考えていく中で大事なことは、観光政策を前面に出すのではなく、まちづくりからの発想で交流人口を増やして行かなければ長く続かないのではないか。
もう一つ、本市として政策反映は出来ないが石川県と輪島市で実施している施策を紹介する。
都市の玄関口である能登空港は、鉄道網が無く高速交通の空白地帯の、いわゆる陸の孤島と言われている輪島市にとっては重要な交通機関である。景気低迷の中、各航空会社も採算性を考えており、採算が合わない空港・路線については廃止を進めている状況は当然である。しかし、能登空港の路線が廃止されれば、輪島市にとって影響は相当なものと推測が出来る。これの対応策として輪島市を始め近隣都市では、平成15年開港時から、就航している全日空と搭乗保証制度を実施しているとの事でした。搭乗率によって輪島市が全日空に対し助成をする制度で、輪島市、全日空双方でメリットのある制度と推測する。