丸亀商店街視察
近年、全国的に多くの商店街がその賑わいを失い、シャッター商店街が増えている。このような状況の中で、商店街の再開発に成功し賑わいを取り戻した商店街である丸亀商店街を視察した。年間約13,000人の関係者が視察に訪れる商店街であるが、再開発が成功したと言われた当時は「特殊例で参考にならない」が最初の評価だったそうだ。
丸亀商店街の歴史は古く1,588年に開町し約420年以上の歴史がある。かつては、四国4県の人口400万人が商圏としていた全国有数の商店街であったが、この商店街も衰退の一途をたどって行った。高松市の基幹産業は商業で、市中心部5㎞圏内に産業が集中し税収の75%がこの地域からである。この地域の衰退は高松市・香川県の税収に影響する、非常に重要な地域である。
商売が衰退すれば、店はつぶれシャッターを下ろす。シャッターがおりた店が多くなればその商店街のイメージは悪くなり、商店街全体が影響を受ける。
そして、税収にも大きく影響する負のスパイラルに陥ってしまう。そのような状況下で「民間主導型再開発事業」に着手したのが丸亀商店街である。
なぜ、中心部の再生が必要なのか。一時期、大型商業施設は郊外に出店を続けていたが、行政コストからみればその差は歴然である。新しい都市を造るには莫大なインフラ整備費用がかかるが、インフラ整備が整っている中心部は公共投資も殆ど必要がない。この高松市の例をみると、一人あたりの行政コストは約6倍も郊外の方が高くかかっているそうだ。コストがかかっているがさほど税収が上がらないのが大型店の特徴でもある。本社が東京であれば、税金が地元に落ちにくい。大型店を消費者は歓迎するが行政としては、そうとも言えない。このことを考えれば、都市をコンパクトに縮めなければ都市基盤を維持していくことは無理という結論が出る。しかし、だからといって郊外規制をしても中心部が再生することは無い。行政が支援しても当事者である商店街が頑張らなければ意味がなく、成功もしない。なぜ、大型店に人が集中し商店街が衰退するのか。それは、単純に大型店は消費者に支持されているからである。
市民の意見の中には、商売意欲が見られない商店街に対し、なぜ税金を投入しているのかという意見が寄せられることも有る。これが、一般人の考え方であり素直に受け止めることも大事である。多くの商店街で問題になるのが土地の所有者と利用者が違うところに問題が隠れている。大家はその店舗の家賃を下げるくらいなら活用されなくても良いと考え、また、再開発に関しても改めて借金をしてまで協力しようとは思っていない点である。そして、店舗を貸すにしてもどんな業種でもこだわりがない。これらの問題に商店街組合が介入できるかといえば出来ないのが現状である。丸亀商店街振興組合はこれらの問題点の解決の糸口は「土地問題」と考え、徹底的に研究し取り組んだ。これが成功のカギである。
土地の所有権と利用権を分離し定期借地権を利用し再開発事業費の徹底的な削減を実行し事業の成功を収めた数少ない成功例である。
当然、民間主導型といえども行政の補助金は投入されている。しかし、その投下された補助金に対する利回りはなんと6%だと言う。補助金を投資金と考えている自治体は少ないが、商店街組合は投資金と考え、再開発により増えた固定資産税や法人税を利回りと考え、このような言い方をしているのである。自治体にとって税収増は嬉しいことである。ただ単純に再開発をした、ではなくしっかりと住民そして行政とWIN・WINの関係を構築できたことはとても参考になる。
また、これからの商店街の事業展開は「歳とれば丸亀町に住みたいよね!」と言われるような街を創るそうだ。ここでも、一つの成功例を見ることが出来た。それは地域医療である。行政が見ると大病院が集積している都市部は医療が充実しているとしている。しかし実態は待ち時間2時間、診察3分が大半であろう。このことから丸亀町では、商店街の中のマンションの商業スペースには町医者(丸亀町病院)を誘致している。この病院は、様々な検査機器を取りそろえ、リハビリ、ケアに力を注いでいる。入院施設は無くマンションの居住区を病室と捉えており、この病院の後方支援先、連携先として国立病院・県立病院を備えている。そこの住民は、具合が悪くなればエレベーターを降りれば病院であり、高齢者にとっては住みやすい環境になっている。
本市においても、横須賀中央エリア再生促進アクションプランを策定し実施段階に来ている。住民の購買地域が横浜駅、みなとみらい地区を中心に年々移動し本市中央エリアから遠ざかっている。追い打ちをかけるように平成22年には本市の代表格的な大型商業施設の一部閉館となるなど、市内中心部の交流人口は年々10%ずつ落ちている。このような状況を打開するためのアクションプランだが、早々に大滝町1丁目大型商業施設建替え事業が中断となっている。このことから見ても、再開発事業の難しさを感じるが実施に当たっては行政主導型ではなく、民間主導型で実施するべきだと思う。当然なことだと思うが、どこにでもある商業施設、まちづくりでは近隣地域の上大岡、横浜、みなとみらい地区に勝てるわけがない。半島ならではのハンディーがあることもあるが、やはり特徴があるまちづくりをやらなければならない。横須賀のイメージに合ったまち、横須賀を感じてもらえるようなまちづくりでなければこの大事業も結果を残すことは難しいと考えられる。今後10年間で横須賀の経済活性化の重点施策を成功させるためにも、単純な商業施設建設は行ってはならない。
最後に理事長の言葉が印象的であった。「再開発は、やる気の問題ではなく、本気かどうか」である。