都市問題会議

2011年10月1日

今回の開催場所は鹿児島である。知っての通り鹿児島は念願の九州新幹線の全線開通が実現し公共交通が飛躍的に発展した事により地域資源が向上し、この会議のテーマの名の通り「都市の魅力」がアップした事は間違いないだろう。

なぜ「都市の魅力」の向上を目指すのかは、これは当然のことながら地域の活性化とそれに伴う経済活動の活性化を期待しての事であろう。都市の魅力が無ければ人は集まらない。現在の国内の状況は人口減少、少子高齢化、そして経済の縮小と全国的な問題ではあるが、その中での都市間競争に負けていけばおのずとその地域の活性化は望む事は出来ない。行政としても持続的な活性化、経済活動、「ひと・もの・かね」の流れを作る為にも様々な策を講じなければならない。今までの交流人口の考え方は「一時的」な観光に重点を置いていたとの指摘に納得である。一時的な、一度だけ訪れてくれるだけでは交流人口の増大には限界がある。継続的にリピーターとして来てもらうためには地域とのつながりが不可欠である。地域力=人的要素と位置付けられている中で、従来型の観光では無く地域ごとに特徴ある食・文化・自然などからの「まなび」や「体験」そして地域住民との「ふれあい」を充実させる事が重要で、そのためにもそこに住んでいる地域の人、人的要素が兼ね備わっていなければ上手くは行かない。実際に歴史文化を実体験を目当てに観光地を訪れる方が増えているのは確かである。そして交流人口の拡大を図るのに欠かせないのが公共交通網である。そういった中で、公共交通としてのJR九州の戦略を聞く事が出来た。

地域・経済の活性化の一翼を担っている公共交通の役割は重要である。そんな中でJR九州の取組みを聞いた。一番はやはり九州新幹線の開業の話だった。CMでも見たが沿線に地域の方が集まり手を振っている姿は印象的であった。あのイベントには約20,000人の方が集まったと報告があり、3.11の影響を受けたものの告知戦略としては成功だと思った。また、商圏も拡大させ今では新幹線一本で青森から鹿児島まで来る事が出来るようになった事もあるが、主に関西圏をターゲットにしているそうだ。一方、新幹線だけでなく通常の路線にもJR九州の戦略性が見られた。例をあげると「指宿のたまて箱・浦島太郎伝説にちなんで」「A列車で行こう・大人の雰囲気で地元産の飫肥杉をふんだんに使用した車体」、「海幸山幸・宮崎、日南の海、山の豊かな自然がはぐくむ美しい景色、食、温泉などをイメージ」「はやとの風・車体を真っ黒にして薩摩の黒酢、黒豚、黒牛、黒砂糖、黒薩摩焼等をアピール」など、路線・車体にストーリー性を持たせているのが分かる。この「ストーリー性」はどの自治体、観光には重要視されている事である。

様々な話を聞く事が出来たが得に印象に残った事は、「ホテル内で全てがそろってはダメだ。」との発言だ。現在のホテルは、宿泊、飲食だけでなく利益追求の観点から温泉付きお土産の販売は当然で、エステやカラオケなど、ホテル内で全ての用が足りてしまっている状況で、これでは「まち」がさびれていくのは防げない。ホテルを宿泊拠点にして“まち”を歩きまわってもらわなければ、活性化に繋がらないとの指摘に共感した。しかしながらこれには多くの宿泊施設の理解が必要となる。

次に地域資源についてであるが、会議の中で紹介されたのが以下の部分である。

1、地域になにがあるか「発見」すること。

  住民にとっては当たり前のものでも、外部の人にとっては価値があるような資源を発見することが重要。特に最近地域活性化に繋がっている「B-1グランプリ」や映画のロケ地ツアー等も重要視されている。

 2、資源の魅力を「磨きあげる」こと。

  地域資源の中には、時間の経過とともにその価値が減じるものもある。伝統芸能等の文化的資源については継承者を確保し、その価値を維持していく事が求められる。訪れる人は「本物」を求めてくる事から資源の品質の確保も重要なポイントである。

 3、資源の情報を「発信」することである。訪れる人は地域資源を消費するだけでなく、そこにある「ストーリー」を体験することが求められている。食を例にとれば、地域の特産品を食べるだけでなくその地域の食文化や歴史的経緯等を知り追体験することで単なる食にとどまらず、より付加価値の高い資源となる。

やはり地域の資源を有効活用する事は大事であるがその資源を発見するためにはその地域住民の参加が重要だ。

今回開催地の鹿児島を見ると鹿児島の歴史的資源として薩摩を代表する西郷隆盛である。その他にも黒田清隆(総理大臣)東郷平八郎(軍人)村橋久成(サッポロビール創始者)など有名で、自然ではやはり桜島であろう。また、今年全線開業した新幹線は大いに地域資源となるであろう。

横須賀は地域からみれば首都圏から1時間圏内の位置しており3方を海に囲まれた気候も温暖で過ごしやすい土地である。近代歴史からみても、ペリー来航を始め海軍航空隊の発祥の地でもあり軍都・軍港で栄え、首都圏唯一の自然島で以前は要塞だった猿島があり世界3大記念艦三笠もあり地域資源はそれなりに豊富である。やはりこの今ある資源を有効活用する事が大事である。横須賀の観光名所の一つでもある軍港クルーズは地域の資源を有効活用している例でもあろう。この資源にしっかりとしたストーリー性を持たせ、それをまず市民に理解をしてもらい、次に外部の人に情報発信をし資源を磨きあげ持続させていかなければならない。

旧軍港都市で海事記念館がないのは横須賀だけである。別に「はこ」モノを作れとは言わないが、歴史的資料、生き証人は時間が経つにつれ無くなってしまうものである。資源を継承、磨きあげる為にも行政として資料集め保管は最低でもしていかなければならない。人口減少に伴い財政基盤が揺らいでいる中ではあるが、魅力ある都市づくりをしっかりと行わなければならない。

*参考として会議中に配られた資料から記事を抜粋