弘前大学連携事業

2012年11月2日

少子化の影響により各大学とも、入学希望者の「減」が問題になっている。それまで大学は教育と研究に重きを置いていたが最近では「地域貢献度」も大学の評価に繋がるという社会の流れを捉え、活動をしている。行政も、大学を地域の資源と捉えその「大学力」を活用しようと官学連携事業を模索し実施している。

 そんな中で、今回は弘前大学と連携事業を行っている弘前市を視察した。弘前市と弘前大学は、平成18年9月に「弘前大学と弘前市の連携に関する協定」を締結し本旨に基づく連携モデル事業として様々な地域課題に対応するために、弘前市のまちづくりや地域活性化に関する研究を事業委託している。その事業を推進するために平成23年度に「弘前大学との連携推進調査研究委託モデル事業」が実施された。この事業は、予算額3,000千円(1研究1,000千円上限)で実施状況は応募数13件でその内4件が採択された。選考要素は

① 募集年度に実施することで最大の効果を得ることが出来るか(緊急性・具体性)

② 市民生活への関わりの大きさ(有効性・実効性)

③ 「弘前市アクションプラン」との関わり

④ 弘前大学の意向

である。説明を聞く限りでは④の大学の意向が選考要素の中で大きいとの印象を受けた。平成23年度に採択された事業については、研究成果の発表会が義務付けられている。研究発表会には当然のことながら一般市民も参加できる。

 この事業で評価は最終的に政策に反映したかである。23年度採択された4件の内の1つである「留学生による多言語活用調査事業」が政策に反映されている。この研究は、弘前大学の国際交流センターが研究し発表したもので、在学中の韓国人留学生による弘前の情報発信サイト「ルポルタージュ弘前」を開設したものだ。韓国人留学生に、韓国人の視点で弘前市の魅力を見つけてもらい、それを韓国の皆さんに紹介している。確かに、この事業は少子化の影響で日本人の学生が減っていることを受け、外国人留学生を獲得することに貢献している。これは大学の意向に沿っている。また、弘前市としても定住者(学生)が増えることと、観光客の誘客につながると考えれば、両者の思惑は一致している。このような発想は、行政からは中々出で来ないものであろう。24年度も前年と同じく4件採択し、研究中とのことだ。次世代を担う人材育成や地域全体の活性化のための大学研究機関と市の連携強化は少ない予算の中では、費用対効果が大きいものになることも考えられる。

全国的に広がりを見せている大学の「地域貢献度」の流れを受けて、それをランキング化しているメディアも出てきており、日本経済新聞でも特集を組んで紹介している。今年の9月から10月中旬に実施した調査によれば、全国の国公私立の計731大学を対象に行い独自の方法によってランキングした集計がある。総合ランキングでは、北九州市立大学が1位、宇都宮大学が2位となっている。この中で地域貢献体制の充実度見ると、茨木大学、横浜国立大学が名を連ねている。まさに、このようなランキングが発表されれば大学の評価基準も変わることは容易に想像がつく。しかし、地域貢献を考えた場合、大学の特徴を活かした地域貢献をしていかなければ、その大学の価値が薄れてしまうのではないかと思う。本市には、神奈川県立保健福祉大学が立地している。その名の通り保健・福祉は行政運営の中でも重要な要素を秘めている。そんな中、この大学との連携事業は欠かすことが出来ない。当然、本市も様々な協定を結び、官学連携でお互いに活用しあい地域に貢献していくことが重要である。